第104回 市内で唯一の酒造図絵馬
更新日:2024年4月1日
問い合わせ:文化振興課文化財・歴史資料係
弘化4年(1847)の「酒造之図」は、酒造りの様子を描いたものとしては市内で唯一の絵馬です。この絵馬はもともと久喜本町の千勝神社に奉納されていたもので、大きさは縦81.0センチメートル、横120.8センチメートルあります。
画面右上に「■(やまよし、注釈)蔵之図」、左下に「当所新町 願主平吉」とあり、この絵馬が江戸時代末まで久喜新町で酒造業を営んでいた吉田酒造の関係者により奉納されたものであることがわかります。
絵師は隆光で、酒の仕込みから樽詰めまでの工程を丁寧に描いています。特に長木の端に大石をつり下げて、その重さを利用して槽(ふね)の中のもろみから酒を搾る様子がよくわかります。画面左上には今年できた新酒を題材に詠んだ「積揚(つみあげ)た 富士豊なり 新酒樽」「松風へ 楽しさ贈る 新酒樽」などの8句の俳句が書き添えられています。また、左下の酒樽から吉田酒造では「神酒谷」という銘柄の酒を醸造していたことが読み取れます。
県内で確認されている他の酒造図絵馬と比べると、この絵馬の人物の表情は役者風(イケメン)に描写されており興味深いものがあります。
奉納目的は、絵馬の奉納時期が弘化4年2月とあることから、新酒が無事に出来たことを感謝し、その出来映えの良さと商売繁盛を感謝して奉納したものと思われます。
当時の酒造りの様子を具体的に知ることができる好資料です。
※注釈:■は「∧」の下に「吉」の字
酒造之図絵馬(久喜市立郷土資料館所蔵)
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