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第39回 吉祥(きっしょう)を祈る 銅製蓬らい文鏡(どうせいほうらいもんきょう)

更新日:2018年7月25日

関東最古の大社と伝わる鷲宮神社には数多くの社宝が伝えられていますが、その中の一つに銅製蓬らい文鏡があります。

銅製蓬らい文鏡は、直径22センチメートルの日本で作られた円形の鏡です。詳しい製作年代や作者は不明ですが、文様(もんよう)(模様)の特色などから室町時代に作られたものとされています。室町時代を代表する優れた作品であることから、昭和39年に埼玉県の有形文化財に指定されました。

この鏡の名称にもある蓬らい文とは、蓬らい山(ほうらいさん)を象徴した文様を指します。蓬らい山とは古代中国において海上にあると信じられていた想像上の神山(しんざん)の1つで、仙人が住み、不老長寿の仙薬(せんやく)があるとされていました。

海中に立つ岩山に仙人、松、鶴、亀などを配して図案化するのが一般的な蓬らい文です。

鷲宮神社の銅製蓬らい文鏡の文様のモチーフも松・鶴・亀が用いられていて、中国の伝説に基づいた蓬らい山を表現しています。

松・鶴・亀といえば、現在でもおめでたいものとして広く認識されていますが、蓬らい文が文様的に流行したのは平安時代中期以降のことです。特に松と鶴は吉祥を表す縁起のよい文様として、平安貴族たちの間で広く流行し、当時の和歌や物語にもよく登場しています。

この蓬らい文が施された鏡が盛んに作られるようになったのは鎌倉時代になってからのことです。神社に奉納したり、婚礼といった特別なお祝いのために製作されたようです。

本品の複製(レプリカ)が郷土資料館に常設展示されていますので、ぜひご覧ください。

写真 銅製蓬らい文鏡(どうせいほうらいもんきょう)
銅製蓬らい文鏡

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